大好きな日常を見つけに!甲府みち活会議

2025/03/07

2024年10月25日、官民連携でまちなかの居場所づくりの社会実験が開催されている山梨県甲府市で、「甲府みち活会議」を実施しました! 
甲府の”まちなか”と呼ばれる中心市街地は、富士山や八ヶ岳、南アルプス連峰などに囲まれた自然豊かな甲府盆地の中心にあります。東京からも約100kmと気軽にアクセスできることから、都市的な暮らしと里山的な暮らしが両立できる環境として注目を集めています。
10月の1ヶ月間は、そんな甲府のまちなかにある広場や公園、ストリートを使って、「大好きな日常をつくる」ための社会実験が行われていました。この社会実験を主催するのは「甲府まちなかエリアプラットフォーム」。

みち活会議の会場は、社会実験会場のひとつである道路空間「オリオン通り」。夕暮れ時、帰宅を急ぐ人通りの中、多くの方々にご参加いただきました。

会議にご登壇いただいた方々は、つぎのとおりです。
・雨宮 潔さん(株式会社岡島/甲府まちなかエリアプラットフォーム 会長)
・宮沢 喬さん(有限会社VISUAL AND ECHO JAPAN/甲府まちなかエリアプラットフォーム)
・稲山 貴則さん(株式会社 稲山貴則建築設計事務所/甲府まちなかエリアプラットフォーム)
・寺崎 亮さん(寺崎COFFEE)
・森本 裕光さん(国土交通省道路局 ほこみち担当)
・山名 清隆さん(ほこみちプロジェクト事務局 プロデューサー)
・【進行役】三谷 繭子さん(ほこみちプロジェクト事務局 ディレクター)

冒頭は、ほこみちプロジェクト事務局の山名さんから最近の道路活用の動向について、続いて国土交通省道路局の森本さんからほこみち制度についての紹介からスタート!

オリオン通りの特設会場に座席を設置した、ストリートでのみち活会議

官民連携で“まちなかならでは”のライフスタイルを追求

続いて、「甲府まちなかエリアプラットフォーム」の雨宮会長から、道路などまちなかの公共空有間を使った活動を紹介いただきました。

雨宮さん;わたしたち「甲府まちなかエリアプラットフォーム」は、民間事業者と行政がともに、『大好きな甲府の日常をまちなかにつくる』ことを目指して活動しています。わたしは地元百貨店の社長をしていますので、当初は「賑わいづくり」を念頭に置いて参加していました。しかしメンバーと議論する中で、「住んでいる人が幸せを感じられるまちづくり」を目指すべきだと、活動のゴールを定めました。
そのために、今年度はまちなかの余白を磨いて、まちに出かけたくなる場所を作る社会実験をしています。非日常の大きなイベントではなく、持続性のある魅力を積み上げるためのマルシェやコンテンツを用意しています。

「甲府まちなかエリアプラットフォーム」の活動紹介をする雨宮さん

年代もばらばらで、最初は知らない人もいた「甲府まちなかエリアプラットフォーム」のメンバーでしたが、社会実験の企画が具体化していく中で、何でもガンガン言い合い、年代も立場も関係なく何でも言い合える関係に。殻が破れたといいいます。

甲府市の担当である地域デザイン課の職員もともに動いており、「みんなでやろうぜ!」という機動力が感じられました。
「社会実験が具体的に動き出す前は、正直に言ってこの活動でなにをするのか全然わからなかった」とは宮沢さん。湧き出すエネルギーのスイッチを入れる、それも社会実験の醍醐味と言えるかもしれません。

情報が集まるところに人が集まり、道はメディアになる

甲府のお気に入りを集めた手作りの掲示板製作に携わった宮沢さん(中央)

普段通り過ぎるだけのオリオン通りも、社会実験中は掲示板の前で足を止める人の姿が見られた

宮沢さん;甲府はいろんなイベントがありますが、知られていないことも多く、いろんな世代で情報共有ができていない状況があります。SNSよりリアルで、情報が交換できる場所を作ろうと思いました。本業はWEB制作をしていますが、実はアナログが好きなんです。
オリオン通りは中心街と飲み屋街を繋ぐ大事な通り。人通りは多いですが、暗いし、もったいなさを感じていました。

雨宮さん;江戸時代の札ノ辻と同じですね。札ノ辻の周りに人が集まって、まちができる。現在においてもう一度そこにトライしようという話から始まりました。

――情報が集まって、わざわざ通る目的になる、ということですね。

自在に変化させられるファニチャーで自由度アップ

通りに並べられたオリジナル家具に込めた想いを語る稲山さん(右から4人目)

「オリオン通りに覚えてもらいやすい家具があるといいなと思い、デザインしました。同じ構造でテーブルもベンチも、高さの違うものを作りました。」とは、設計事務所をしている稲山さん。

稲山さん;社会実験では、安全性に配慮して、動かせない大きな什器が多いと思います。動かせる家具にしたことで、マルシェの時には屋台にもなりますし、飲食の客席にもなります。ただ、毎日の出し入れや管理ができたのは、周辺で仕事をしているメンバーが多かったから。自分たちの規模感に合っていたんだと思います。

宮沢さん;40個程ある家具を、メンバーで組み立てたり色塗りをしたり、DIYで作りました。看板やパンフレットとも色を合わせて、統一感を演出しています。作ると愛着が湧きますね。

――社会実験の前半と後半ではレイアウトも変えて、人の滞在性を検証されているそうです。好きに動かして使ってもらいたいですね。

毎日同じ場所に立ち見続けてわかった、通りの人の変化

オリオン通り沿道の店舗オーナーとして、道路空間活用への期待を語ってくれた寺崎さん(中央)

寺崎さん;オリオン通りの一角でコーヒー店を営んでいます。エリアプラットフォームのメンバーではないので、一歩引いた立場で俯瞰しながら、まちの一商店としてこの活動をサポートさせてもらいたいという気持ちでいます。
早朝から夜まで店をオープンしているので、毎日家具を並べるところから撤収するところまで全部見ていました。通りに訪れる人の流れも、毎日同じ場所から見ていました。うちのお客さんに聞くと、最初は「座るのが恥ずかしい」と言っていたのが、一ヶ月経ってだんだん馴染んできたのを目の当たりにしています。

――家具があるからといって、いきなり隣に座った人が仲良く喋りだすことはないかもしれない。でもちらほら使う人が現れて、くつろぐ人が出てくると、馴染んでくる。家具があるからではなく人がそこに居るから風景になっていくということがありますよね。

寺崎さん;昨日、まちのどこかでパンを買って、うちでアメリカ―ノを買って、オリオン通りのテーブルで朝食を食べている人がいました。飲食店だとそうはいきませんが、それが許されるのはまさに公共空間の良さだと思います。

宮沢さん;オリジナルの“甲府朝食セット”を作ったということですね。それって最高じゃないですか。

稲山さん;徒歩圏内のまちなかをよく知っている人なら、どこで何を買ってどこで食べようかのアイディアが生まれる。まちの解像度が高い人ほど、公共空間は使いやすいのかもしれませんね。

公共空間だからこそセルフメイドの楽しみ方がある

――今後、オリオン通りがどんな通りになればいいと思いますか?

寺崎さん;賑わい創出を目指すより、個人個人の幸せにフォーカスできる通りになるといいなと思います。自分がいかにまちに関わって主役でいられるかが、豊かな暮らしだと思っています。

宮沢さん;そのための環境や手段を用意しておくことが、まちづくりのポイントだと思います。大切なのは、個人がその楽しみをどのように見出そうとしてくれるか。そこをつつけるようなプロジェクトにしていきたいです。「マルシェに来てください」というより“行きたいと思える日常”になるといいなと思います。

雨宮さん;2023年2月に岡島旧店舗を閉店しました。岡島旧店舗では、山梨県内唯一のマクドナルドがテナントに入っていて、昔は毎日賑わっていたように、昭和はひとつの“いいもの”にみんなが集中する時代だったと思います。今は、価値観も多様化しているので、その都度出店者の顔が変わっていて刺激的、そんな通りになると楽しいのではないかと思います。
フードコートのように、いろんなものを持ってきて食べることで、人とのふれあいや楽しさを感じる。それをオープンな通りで体験できる!

宮沢さん;まさに、まちなか全体がフードコートですね!

社会実験として実施したサンデーマルシェでは、オリジナル家具が屋台や客席として活用されていた

座る価値のある通りを目指して

――例えば、「恰好いい座り方を競うコンテスト」や「かっこよくお弁当を食べている人コンテスト」など、やる側も座る側も遊びの要素を入れて気楽に楽しめると、もっとわくわくしそうですね。

宮沢さん;コンテストはいいですね!実は「自由にお座りください」という張り紙も恰好悪いからやりたくないし、家具の持ち去り対策も(持ち去りは起こっていませんが)きりがないと思っています。そうではない、ポジティブな活用の仕方を探しています。寺崎コーヒーでコーヒーを買って飲んでいるだけでそれを見ている人が「かっこいいな、素敵だな」と感じるに、それが通りに滲み出るように使ってもらいたいです。

稲山さん;東京の表参道のカフェに座っている人も、見られている意識はあると思います。見る・見られるの意識を持ってまちづくりを考えるのも、面白そうです。

寺崎さん;うちの店内も、見える設計にしました。甲府のまちは狭くてすぐ知り合いに会うので、クローズドな設えがいいか迷いましたが、やるならオープンに、座る価値を目指して思い切って作りました。似ていますね。

――恰好よく歩きたくなる通り、おしゃれをして行きたくなる通り、中高年が手を繋いで歩きたくなる通り、そういう気風が生まれてくるといいですね。小さくて実験的なことをぜひ遊んでください。

DIYで店舗をリノベーションした寺崎COFFEE(手前)と老舗の花屋さん(奥)がオリオン通りの入口を演出している

交流の生まれる現場から!来場者と意見交換をして幕

――最後に、来場者のみなさんとも意見交換をしました!

意見交換の場では、来場者からもオリオン通りの変化を喜ぶ声が挙がった

Aさん;すごくわくわくしながら眺めさせてもらっていました。わたしはもうひとつの社会実験会場である南広場でのイベントに関わらせてもらっています。これからも協力させていただきたいです。

Bさん;オリオン通りにある銀行に十数年勤めていますが、風景が全く変わったのを目の当たりにしました。通勤路なのでここで飲むのはまだまだ恥ずかしいのですが、少しずつ解消していきたいです。エリアプラットフォームのメンバーとして、自走化まで一緒にやっていきたいと思っています。

Cさん;わたしは大学生で、今回社会実験のアルバイトをしているのですが、こういう活動があるからこそ、まちなかに出てきてバイトを通じてまちの方と交流ができていることをすごく感じます。毎日すごく楽しいです。

――みち活会議が始まる前、調査アルバイトをしている若い方が「こんなに人が喜んでいるのを調べる側であることが嬉しい」と言っていました。まさにアルバイトを通じてまちづくりにコミットしているわけです。

みち活の社会実験を通じて、様々な人の交流が生まれ、大好きな日常が作られつつあることを感じた一日でした。これからの甲府のまちの変化が楽しみです!