「ギリギリアウト」精神で道路空間活用の新たな可能性をひらけ!福島市・吾妻通りみち活会議

2025/03/07

2024年8月30日、夏の暑さが少し和らぎつつある福島市で、「吾妻通りみち活会議」が開催されました。主催は、福島市路政課、吾妻通りほこみち社会実験企画運営チーム、そしてほこみちプロジェクト。会場は、福島駅近くの福島アクティブシニアセンターです。平日にもかかわらず、吾妻通りの沿道事業者や道路管理者、さらに大学生なども含めた60名以上が集まり、熱気あふれる中での開催となりました。

福島市は、人口25万人の地方都市です。近年は、駅前の百貨店の閉店・解体、その跡地における市街地再開発の長期化、さらに数年後には郊外に大規模ショッピングセンターの建設が予定されるなど、中心市街地の活性化が急務となっています。
そうした中で、2024年10月に、初の社会実験「福島駅前ほこみち社会実験WEEK さんかくストリート 」が実施されることになりました。将来的なほこみち制度の活用を念頭に置いた取り組みです。これまで、イベントで道路空間を一時的に活用してきた経験はあるものの、道路空間を日常的・長期的に活用していく挑戦はまだまだこれから。社会実験まで2か月を切ったこのタイミングで、改めて道路空間活用の可能性を考えるこの会議が開催されました。

福島ならではの「みち活」にエールを送りにきた

イントロインスパイアトークとして、ほこみち広報アドバイザーの山名清隆さんが登場。
山名さんからは、「福島ならではのみち活にエールを送りにきた」と熱いメッセージ。続けて、国土交通省道路局の酒匂一樹さんからは「参加者それぞれの立場で『こんなこと実現できたら面白い』というアイデアを出し合いながら、この会を楽しみましょう」との投げかけがありました。これに応じて、地元・吾妻通りの会代表の佐藤和子さんからも「一時的な社会実験にとどまらず、継続的な展開も見据えながら、楽しいみち・まちを創っていこう」とエールが交わされます。会場の熱気も一気に上がっていきます。

各地で進む「みち活」最新動向を体感せよ 

まずは、ほこみちプロジェクト事務局の真田武幸さんから、「みち活動向」と題して、日本各地の最新動向が紹介されました。東京・大阪などの大都市のみならず、地方都市においてもみち活ムーブメントが広がっていることを紹介。どの事例からも、地域の道路管理者・民間事業者・生活者などが一体となって、みちづくり・まちづくりが進んでいる様子が伝わっていきます。また、制度活用のステップをわかりやすく伝える「ほこみちのはじめ方」や活用パターンの可能性、持続可能な公共空間活用を目指すための広告展開事例と実験的なストリートファニチャー事例も共有。「ほこみち制度により、道路空間の活用は『ダメ』から『できるかも』に変わりつつある」と真田さんはエールを送ります。

続いて、ほこみちプロジェクト事務局の吉次翼さんからは、「みち活クリエーション」と題して、欧州各地の最新動向が紹介されました。パリ五輪における大胆な公共空間活用のチャレンジには参加者も驚きの表情。さらに、福島市と同規模の地方都市であるオランダ・ユトレヒト市におけるトランジットモール化や水辺空間再生の取組も紹介。「世界の都市はいま、『公共空間活用』を通じて、社会課題解決や国際競争に挑んでいる」と語りかけます。東京・パリといった大都市のみならず、地方都市においても公共空間活用のダイナミックなチャレンジが生まれていることを全員で共有しました。

みち活の可能性を味わおう

フロアのみなさんを交えてのディスカッションがはじまりました。
今回の会議では、参加者がインタラクティブに対話しやすいように、教室型の会場レイアウトを変形して、お互いの表情がよくみえる円形のレイアウトにしました。こんなひと工夫も、みち活会議ならではです。

まずはそれぞれの感想共有です。「とても刺激的なトークで、もっといろいろな人に聞いてほしかった」「実はこんなことをやってみたい」といった声があふれ出します。マイクリレー形式で、次々に「このひとの感想を聞いてみたい」「普段話したことはないけれど、あの人はどんなことを考えているのだろう」と気になったひとに、マイクがパスされていきます。まるで堰を切ったかのように、自由闊達に吾妻通りのクリエーションを語っていく姿に、会場の空気はどんどん熱くなっていきます。

そして、今回の社会実験を支える「企画運営チーム」メンバーの紹介も。ロゴデザインを手がけた鈴木孝昭さんからは、社会実験の愛称「さんかくストリート」には、吾妻通りにある「さんかく広場」と、みんなが「参画」してほしいというダブルミーニングを込めたことが紹介されました。吾妻通りの未来を想う若い力に、会場からは大きな拍手と応援が送られます。

社会実験だからこそ、ギリギリアウトを目指せ!

ある参加者からは「社会実験の場で、いろいろなことにチャレンジしたいけれど、時間と予算が決まっている中でどこまで出来るだろうか」とリアルな声も。すかさず山名さん、そんな不安の声を受け止めつつ、一緒に解決の糸口を探していきます。
山名さんが投げかけたキーワードは「ギリギリアウトを目指せ」。これは、山名さんがプロデューサーを務める「ミズベリングプロジェクト 」の活動を通して出会った言葉だそうです。
ギリギリセーフの枠内でアクションを起こしているだけでは、社会は前進しない。ギリギリアウトを狙ってこそ、そこに新たな可能性が生まれる。社会「実験」なのだから、うまくいかないことがあっても当たり前。安全なセーフの枠内で挑戦していては、失敗もないけれど成功もない。注目を集めることもない。ギリギリアウトを目指してみることで、発想が広がり、周囲が「あっ!」と驚くような発見も生まれるのだ、とエールを送ります。これには、会場全体から深いうなづきが。

1本のみちに、新たなシーンを生み出そう。その登場人物になろう。

ギリギリアウト精神で、吾妻通りにどんな可能性を生み出せるだろうか。
会場内から続々とアイデアが飛び出します。そんなたくさんの思いに、道路管理者側からも「自分たちも頑張りたい。ぜひ、あたたかく応援してほしい」という前向きな声も。会場みんなで一体となり、吾妻通りに新しいシーンを生み出そう。ひとりひとりが、シーンを生み出す登場人物になろう。そんな盛り上がりのうちに閉会となりました。

まだまだ始まったばかりの吾妻通りでのほこみち活用に向けた取り組み。社会実験は、10月19日~27日にかけて予定とのこと。さらにその先も、福島・吾妻通りのチャレンジは続いていきます。いま、この記事を読んでいるあなたも、そんな新しいシーンの登場人物の一員になりにきませんか。